劇団普通『水彩画』のアフタートークにて、山内ケンジ様をゲストにお迎えしお話しいただきました内容を、アフタートーク回にお越しいただけなかった皆様にも是非ご覧いただきたく、お許しをいただき書き起こさせていただきました。是非ご覧くださいませ。
ゲスト 山内ケンジ様(城山羊の会)
石黒麻衣(劇団普通主宰)
舞台写真:福島健太
石黒 よろしいでしょうか? それではアフタートークを始めさせていただきたいと思います。ちょっとあの、(客席が)2面あるので、どちらを向いていいのかわからなくて、こういう形の席になっております。
山内 城山羊の会、山内と申します。よろしくお願いします。
石黒 よろしくお願いします。劇団普通の主宰の石黒です。よろしくお願いします。それでは始めさせていただきます。
山内 はい。石黒さんはあれなんです。役者も普段されるから。去年の年末の城山羊の会に出ていただいて、それ以来。半年ぶり。
石黒 本当にご無沙汰しておりまして。
山内 こういう感じの方なので、去年の城山羊の会では、なんて言うんですかね? 風俗嬢ではないんですが、なんか違法マッサージのマッサージ嬢やっていただいてね。岩谷さんが裸になって、巨大なペニスが出てきて。その前でこうオロオロするっていう。そういう役をやっていただいて。とてもね、面白かったです。
石黒 やらせていただきました。
山内 興奮したら、なまったらどうですか? みたいな、稽古中に。それはとても効果的で。
石黒 良かったです。
山内 あれですよね? 茨城弁っていうのはだから、なんとかでしょうよ。とか、なんだろうとかって今日もいっぱいあったけれど。僕の台本は、去年のやつは、はじめはなまってもらうと全然思ってなかったから普通のね、東京弁とか標準語で書いてあったんだけど。でもあれですね。全然一字一句変えなくてもちゃんと茨城弁になりますよね。イントネーションだけで。
石黒 そうですね。茨城弁はほとんどイントネーションとアクセントの違いが主なので。
山内 ありがとうございます。
石黒 今回……。
山内 今日は本当に面白かったです。
石黒 ありがとうございます。
山内 あんまり対峙して言うと、なんかちょっとなんか変だなっていう気がするんですけど。
石黒 ちょっと斜めを向きます。
山内 いやいやいや。いや、ほんとすごいなと思って。僕は『病室』から、初演の『病室』から全部見てるんですけれど。短編のね。テアトロコントとかでやった『電話』とかも見てるんですけど、その中でも今日のは僕は本当に面白かったね。もうベスト1か2かっていうぐらい好きでした。
石黒 ありがとうございます。
山内 なんで好きかって言うと、なんかちゃんと言えなさそうだから言えないんですけれど。でもひとつははっきりしてるのは、前回の三鷹でやった……あ、前回じゃないや。前々回か。三鷹でやった、『風景』ですよね? 『風景』が面白かったんだけれど、とても。でもすごく複雑で混みいっていて。謎の人物っていうか、引きこもりのおじさんとか、なんかいろんなドラマがあって。鄭亜美さんなんか一人二役とかやってたし。僕はあれ多分ね。あのときも僕はアフタートークやったんですけれどね。でもあれはね。台本を事前に読ませていただいていたんですよ。2回も読んでよくわかんなくて。で、石黒さんに直接聞きたいなと。だから初めて見る人よりも全然よくわかっていて、それでアフタートークで喋ることができたっていうことがあったぐらいなんですけれど。それに比べると、今日のは本当にシンプルで。もうミニマリズムというか。意識的にね。そうされてますよね。そういう家族の、いつもやる、その家族間のなんて言うんですか? 感情っていうか? 揉め事みたいなこと。っていうはっきりしたのが、結構それは避けていますよね。
石黒 はい。
山内 100 分の間、最初はドアの鍵が壊れたということと、水槽のことがちょこっと。あとはあの、あれですもんね。コーヒーカップのことで、それだけしかやってないから。それがすごく面白かったなって思います。
石黒 ありがとうございます。
山内 僕も、以前城山羊の会で、ワクチンを打った夜に熱が出るっていう話を書いて。熱が出て、その前半最初の方で薬を飲んだけど、なにも食べないで飲んだから、飲んだ後にすぐになにか食べたほうがいいとか言ってパンを持ってくるとか、そんなようなことが結構ダラダラと会話をしていて、自分としてはそういうなんかどうでもいいことをダラダラと書いているときが、自分の中としてはすごく面白くて。このままもう 90 分ぐらい続けて書けないかなと思ったことがあるんですよ。でも結局なんて言うんですか? 我慢できなくて、なんかドラマチックなっていうか、変なことを起こしていくようになってしまって。本当だったらその最初のそういうなにも起きない事っていうのを、続けられるだけ続けたらどうなるんだろうとか、いつも思っていたりして。それのなんていうんですかね。それの成功例みたい、到達点みたいなことを、今日は見せられた気がして。
石黒 はあ。
山内 とても。本当に感心しましたというか感動しました。
石黒 ありがとうございます。そうですね。なにも起こらないように書きました。なにも起こしたくないなって思って。
山内 台本はどのぐらいあれですか? 早く書いてた?
石黒 稽古の初日の時点では10ページ弱ぐらいしかなくて、そこから少しずつ書き足して、だいたい本番の 2 週間ぐらい前に書き終えました。
山内 早いですよね。2 週間前。書いてる時間短いもんね。
石黒 そうですね。
山内 それでまた石黒さん自分で、自分で全部喋って、皆さんにお渡ししてって感じ?
石黒 そうです。方言を、私が茨城出身なので、iPhoneのボイスメモに全部読んで、吹き込んで、そのデータを皆さんにお渡しして、それで練習していただいております。
山内 なにも起きないとは言っても、謎はあって。いや、なにも起きないっていうか、なんていうかな。人物の背景を削ぎ落としてますね。いつもよりも書かないで。だからすごくリアルなお芝居なんだけれど。そういう削除してるってか見せないところはすごく多いから、不条理劇っぽくなっているなっていう気はするんですけれど。
石黒 はい。
山内 ゆきおとゆきおの婚約者、いるじゃないですか? 荷物はさ、あれはなんなんですか?
石黒 あ、買い物です。
山内 買い物で、あれはなに? 会社に持っていくとか言ってたけど。
石黒 よくひとつのパックが大きい、業務用みたいなお店で買って。誰かが会員券を持ってる人が買いに行って、それを配ったりするっていうような習慣がたまにあるので。私もそれでいただいたりとかしたので、それで入れさせていただきました。
山内 それがなに、あの冷蔵品とか。
石黒 冷蔵品もすごく大きなパックで売られているので、お買い得に。
山内 なるほど。かずくんっていうのは 、2人にとってはどういう関係の人なんですか?
石黒 ゆきおはとても仲が良くて、もう親友のように自分たちも思ってるし、周りにも思われてるんですけれども。婚約者は、自分の婚約者のゆきおの友達で、友達なのは知ってるけど、自分自身はそんなに親しくないっていう間柄ですね。
山内 別にあの、ゆきおがバイセクシャルとかそういうわけではないんですよね。
石黒 はい。
山内 だから別になんてことのない関係ですよね。あと、すごく面白かったのが 、3カ所回想シーンがあるじゃないですか? 回想シーンというか、 2つ回想シーンで、 3つ目が回想ではなくって先の話じゃないですか。安川さんが泣くところが。
石黒 はい、そうです。
山内 それがとても面白い。2つの回想のシーンというのが、2人だけの空間になるんですよね? それが、なんかはじめはね。これ必要なのかなっていうか、その 2人だけになってるんだから、もっと2人だけのプライベートな感じに僕だったら書くんだけど、そんなに変わらないですよね。公共の場所にいるのと。それが、なんだか、多少キャラクターが深まるっていう。この人がどういう人で誰がどういう人ってのが。それはそうなんだけれど。でもその 3つ目で先の話をやって、それがひとつのクライマックスになってるっていうのが、とてもその段階がすごく面白くて。
石黒 はい。
山内 そこと、その前の、伊島空くんが、ちょっとその、かずくんに怒るところがありましたね。あそこはとてもいいんだけど。それをものすごい怖い顔して、用松お父さんが睨んでますよね。あれはね。なんでだろう。あのすごい顔して見てるのは。
石黒 なんか喧嘩してるじゃないかって心配になって見てます。
山内 別にだからわかってはいないのね。
石黒 どちらかというと浅井さんのほうがずっと話を聞いてて気にしてて。用松さんは喧嘩かなって見てる。
山内 それだけのことなんですね。そういうなんか動物的な。あそこがすごく面白かった。
石黒 良かったです。
山内 用松さんの表情とね。用松お父さんはいよいよ認知症が進んでるというか、すごいですよね。本当に。感心しちゃいます。用松さんだけじゃなくって。とにかく、この構造と、このミニマルな話をここまで緊張感を持ってキープさせてるっていう 6人がね。いや、すごいですよね。いや本当に。今まででも一番レベルの高い人、技術の高い人たちを集めてるなっていう気がしました。
石黒 ありがとうございます。
山内 伊島空くんが結構珍しいですよね。今までのメンバーの中では。オーディションかなんかなんですか?
石黒 あ、はい。そうです。それで来ていただきました。
山内 オーディションやってたんだ。
石黒 もうだいぶ前にやったオーディションで。
山内 伊島空くん、多分城山羊の会が初めてだと思います。舞台はね。そのときもオーディションで。
石黒 素晴らしい方で。あ、お時間がそろそろ、来たみたいですので。
山内 ひとつだけね。同時多発の会話のとこあるじゃないですか? あれがちょっと聞いたんだけど、書き方が全部並列に書いてるんですよね? 台本が。それは驚いちゃって。並列に書いてる。普通は上の段と下の段で並べて書いて、それを重ねてやってもらうとかね。あとは星マークとかあってひとつの会話が終わって、次の会話を横に並べて、それを重ねるっていうのが普通なんだけど。そのまま今日聞いたまんまで書かれているから。役者さんはすごくやりにくかったでしょうね。
石黒 いやもう、どうしようってなってました。稽古場で。
山内 そうですよね? 自分のとこだけ掬い取っていかないといけない。でも相手のセリフは全部聞いてるってこと。でもそれがさ、いや、面白かったです。両方聞こえてきて。なんか本当に音楽がステレオでやってくるみたいな感じ。失礼しました。それだけ言いたかった。
石黒 ありがとうございました。なにかあの、告知などございましたら。
山内 告知は別にないです。冬にまた城山羊の会をやりますけど。アフタートークさ、今回すごいですよね。前川さんとか。石黒さん、イキウメとかご覧になったことあるんですか?
石黒 あ、はい。
山内 あるんだ。でも前川さん見たことないですよね。劇団普通。
石黒 初めてご覧になるので。
山内 瀬々監督が見てるわけないですもんね。
石黒 あの、『風景』をご覧いただいてて。
山内 え、見てるんだ。すごいな。それは失礼いたしました。
石黒 いえ、とんでもないです。それでは終わらせていただきます。ありがとうございました。
2024年6月18日(火) すみだパークギャラリーささや